注文住宅を計画していると、
「高気密高断熱住宅」という言葉を聞きます。
具体的にはどんな家なんですか?
高気密高断熱とはどのような状態なのか、
住宅性能にこだわるとどんなメリットがあるのか
ご紹介していきます!
高気密高断熱住宅とは?定義や目安となる数値を解説!
高気密高断熱とは、その名の通り「断熱性」と「気密性」に優れた住宅です。
しかし、どんな断熱材をどのくらい入れるか、などの明確な基準はなく、
あくまでハウスメーカーなどの建築会社各々が謳っているだけです。
「断熱性」と「気密性」は全くの別物ですが、常にセットとなり、
どちらかが欠けていると正しい効果が得られません。
まずは「高断熱」「高気密」それぞれどういうものなのか、
定義と性能の目安(数値)を解説していきます。
高断熱とは?
高断熱とは、熱を伝えにくい断熱材を住宅の外周部(床・壁・屋根)に入れることで、
家の中の温度を保ち、外気温が家の中に伝わらないよう遮ります。
断熱材の素材・種類によって、断熱材自体の「熱を伝える力(熱伝導率)」が異なります。
また入れる断熱材の「厚み」によっても、住宅の断熱性能は変わります。
つまり「熱伝導率が低い(熱を伝えにくい)断熱材を、十分な厚みを持たせて施工する」ことで、
高断熱な家になるのです。
断熱性能を表す値を「UA値(外皮平均熱貫流率)」と言います。
UA値とは、住宅外周部(外皮)1㎡あたりどのくらい熱が逃げるかを家全体で平均化したものです。
設計の段階から机上で算出できます。
なおUA値は、数値が低いほど「熱が逃げにくい=断熱性能が良い」ことを示します。
図:省エネルギー基準 地域区分
引用:住宅・建築SDGs推進センタ― 住宅の省エネルギー基準
上記の図は、国が定めた次世代省エネ基準です。
住宅全体の省エネ性を評価するもので、断熱性能の基準が定められています。
全国を8区分して、1地域・2地域にあたる北海道でUA値0.46、
関東地方から九州地方で5地域・6地域でUA値0.87とされています。
しかし、この基準は国際的に見てかなりレベルの低い数値です。
一般的に北海道など寒冷地以外の地域では、UA値0.6程で断熱性が高いと言われていますが
実際にUA値0.6の家を建てても、本当の快適さや省エネ性は得られません。
よって寒冷地以外で建てる場合も、北海道の基準であるUA値0.46以下を目指したいところです。
高気密とは?
高気密とは住宅の隙間がない状態をいい、住宅内外の空気の出入りが少なくなります。
そのため、熱の出入りも少なくなり、家の中の気温を保ちやすくなるのです。
いくら断熱性能が高い家でも、隙間から外気が入ると外気温の影響を受けてしまいます。
ページ冒頭で断熱性と気密性はセットであると言ったのは、以上の理由からです。
気密性を表すのは「C値(相当隙間面積)」という数値です。
家が持っているすべての隙間を集めて面積で表したもので、
値が小さいほど家中の隙間が少なく気密性の高い住宅となります。
高気密住宅の目安は、一般的にC値は1.0以下と言われていますが、
本当の快適さや省エネ性を得るには0.5以下を目指したいところです。
気密性を高めるにはとにかく住宅の隙間をつくらないことが大切で、
構造材の隙間を気密テープなどで気密処理していきます。
そしてC値は実測値なので現場で「気密測定」をします。
しかし、気密測定を全棟実施している建築会社は非常に少なく、
測定数値を示していても、条件のいい実験棟やモデルハウスなどの
数値を載せていることもあります。
気密性能にこだわるには、必ず全棟気密測定を実施している建築会社を選びましょう。
また、気密測定は測るタイミングが「中間」と「完成」の2回あります。
「中間」はクロスやボードが張られる前、断熱気密層が完成した時点で測定します。
家の完成前に測定すると、隙間があっても正確な位置が特定でき、手直しができます。
「完成」は実際に住む状態での測定となり、その家の実測値となります。
気密性能をより高めるため「中間」と「完成」の2回測定を行うことが理想です。
高気密高断熱住宅のメリット5選
前のトピックでは、高断熱・高気密がどういったものかを解説しました。
では実際に、高気密高断熱の住宅に住むことにより、
生活にどのようなメリットがあるかをご紹介します。
一年中快適な室温で暮らせる
高気密高断熱住宅は外気温の影響を受けにくいので、
夏の猛暑日や冬の寒さが厳しい日も、家中一定の温度で快適に住むことができます。
例えば、夏の暑い日に2階の熱籠りや1階との気温差を感じたり、
冬の寒い朝に布団から出られなかったりといったことがなくなります。
一年中住み心地の良さを実感できるのは、大きなメリットとなります。
光熱費が抑えられて省エネになる
高気密高断熱住宅は魔法瓶のような保温性の高い住宅です。
家中の温度を一定に保つことができ、冷暖房の効きが良いと実感できます。
エアコンの設定温度を強めに調整しなくてもいいので、光熱費を抑えられます。
昨今、光熱費が値上がり続けていますが、家計に優しい暮らしが可能です。
また、設計によりますが、エアコン一台で全室の気温調整ができます。
全館空調もオーバースペックになるため、必要ありません。
換気の効率がよく、きれいな空気を取り込める
気密性がよくなることにより、住宅内の換気効率が良くなります。
現在日本では、建築基準法によって建てられるすべての住宅に、
「24時間換気システム」の搭載が義務付けられています。
そのため窓を開けなくても、常時室内の空気を出して外気を取り込んでいます。
下の図は気密性の悪い家と良い家の換気の様子を図示したものです。
気密性の悪い家は、隙間が多く空気の流れが枝分かれしてしまい、
うまく空気を排出することができません。
一方気密性の良い家は、空気の流れが一本化され効率的に空気を排出できます。
排気の流れに乗って、花粉やPM2.5、ほこり、さらにはニオイまでスムーズに排出できます。
高気密住宅は、家の隅々まで汚れた空気を排出し、きれいな空気を取り込めます。
健康的な生活が出来る
高気密高断熱住宅は人体にも良い影響があります。
代表的な例を3つご紹介します。
【ヒートショック】
ヒートショックとは、急激な温度変化によって脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす現象です。
気温差が激しい場所を行き来すると血圧が急激に変動し、
心臓に負担をかけるなどの体へダメージを与えます。
特に冬場の浴室と脱衣所の温度差による事例が多いです。
高気密高断熱住宅は、住宅内の温度差が少ないため、
ヒートショックを引き起こすリスクがありません。
【内部結露によるアトピー・アレルギー】
内部結露とは、壁などの構造体内部で結露が発生する現象です。
結露が発生することで、断熱材や柱など構造体を腐らせてしまいます。
また、結露による湿気でカビが発生しやすくなります。
カビが発生すると、カビをエサにダニも繁殖し、
アレルギーやアトピーといった症状の発生リスクも高まるのです。
高気密高断熱住宅は、内部結露するリスクが低いと言われています。
断熱材が隙間なく施工されており、住宅外側の断熱材の表面で
外気の温度をしっかりと遮熱するため、構造体内部で温度差がうまれないためです。
内部結露による健康被害もなくなり、住宅の構造そのものの耐久性も維持できます。
【花粉】
前のトピックにある「換気効率の良さ」に付随するメリットがあります。
高気密住宅は隙間が少ないため、花粉を住宅内に取り込みにくく、
花粉が入ってきたとしても、排気に乗って住宅外へ自然と排出されます。
そのため花粉症の症状が和らぎます。
遮音性が高い
高気密住宅は隙間が少ないので、住宅内の音は外に漏れにくく住宅外の音は入ってきにくいです。
お子さんの声が漏れるのを気にするご家庭や、車の往来が激しい大きな道路が近くにある家でも、
騒音問題を気にせず快適に過ごせるでしょう。
高気密高断熱住宅のデメリット3選
高気密高断熱住宅は、メリットだけでなく少しのデメリットがあります。
併せて確認しておきましょう。
建築費用が高い
高気密高断熱の住宅は、そうでない住宅と比較すると建築費が高くなります。
その大きな理由として、性能のいい断熱材やサッシ・窓ガラス・玄関ドアなどを採用するためです。
建材の費用が一般の家と比べ高くなります。
また、気密処理など工程が通常に比べて増えるため、工事費がやや割高になる傾向があります。
ただ、建築費用=イニシャルコストが高い代わりに
光熱費やメンテナンスなどのランニングコストが抑えられるので、
長い目で見れば、イニシャルコストの元を取れる可能性が高いです。
石油ストーブが使えない
高気密住宅は、燃料を燃やし部屋を暖める石油ストーブとの相性が悪いです。
24時間換気システムの換気量と比べ、ストーブが排出するガスの量が多く、
換気が間に合わず一酸化炭素中毒を引き起こすリスクがあります。
ただし高気密高断熱住宅は、エアコンだけで真冬でも十分暖まるため、
石油ストーブを使わなくても支障がないことがほとんどです。
乾燥しやすい
高気密高断熱住宅は、一般の住宅に比べて冬場は特に空気が乾燥しやすいです。
冬の空気は温度が低いため、空気中に含まれる水分量がそもそも少ないのですが、
換気の効率が良いため、空気中の余分な湿気も住宅外に排出してしまいます。
裏を返せば、夏場は湿度が上がりにくく快適ですが、冬場は乾燥が目立ちます。
対策としては、各階に加湿器をつけることや、洗濯物を室内干しすることが多いです。
室内干しは乾燥を防ぐと同時に、洗濯物が早く乾くのでおすすめです。
高気密高断熱なハウスメーカー・工務店を選ぶ3つのポイント
高気密高断熱住宅を実際に建てたいと考えたときに、
どの建築会社を選ぶかによって、住宅のクオリティーは大きく変わってきます。
なぜなら、高気密高断熱住宅の建築は正しい知識と施工の技術が必要だからです。
カタログや営業トークでは高性能を謳っていても、
実際に建てている住宅は、謳い文句通りの性能にはなっていない場合も多々あります。
カタログ通りの性能で建ててくれるメーカーを探すため、3つのポイントをご紹介します。
断熱のレベル・UA値を確認
まずは、どのくらいの断熱レベルを標準仕様にしているか確認します。
具体的には、メーカーが建てたオーナー宅の平均的なUA値を確認しましょう。
また断熱材は充分な厚みを持たせて施工しているか、
ウレタンフォームやフェノールフォームなど
水を含みにくく、経年劣化しにくい素材を使用しているか確認しましょう。
気密測定をしているか・C値を確認
気密性能のトピックで挙げたように、全棟気密測定を行っているか、
可能であれば中間・完成時の2回気密測定を行ってくれるか確認しましょう。
全棟気密測定をしているかはマストです。
またオーナー住宅の平均的なC値を確認しておきましょう。
建物を見学・体感
もし開催しているのであれば、高気密高断熱住宅の体感見学会に参加するといいです。
実際に住宅内の空気感や温度の伝わり方を体感することで
よりメーカーの断熱・気密レベルを確認できるからです。
特におすすめの時期は、真夏・真冬です。
真夏は2階で熱籠りするなど家中で気温差がないか、冷房の効きを確かめられます。
真冬は玄関に入った瞬間にホッと包み込まれる暖かさを感じたり、
裸足で床を歩いても冷たさを感じなかったりと保温性の高さを体感できます。
その体感した建物と、自分が建てる家の性能に差がないか確認しておきましょう。
まとめ
「高気密高断熱住宅とは何か」をテーマに
高気密高断熱住宅の定義や特徴、メリット・デメリットなどをご紹介してきました。
高気密高断熱住宅に関する正しい知識を得たいという悩みを解消できていれば幸いです。
最後にこの記事でご紹介した内容をまとめます。
<高気密高断熱住宅とは何か>
①【高断熱・高気密とは?】
断熱性と気密性は別物だけど必ずセット
断熱性:断熱材によって住宅内を保温し、外気温をシャットアウト
UA値という設計上で計算した数値で表される 理想はUA値0.46以下
気密性:住宅の隙間をなくすことによって、外気の影響を受けない
C値という現場で気密測定をして実測値を出す 理想はC値0.5以下
②【高気密高断熱住宅のメリット】
・一年中室温が一定で快適な住みごこち
・保温効果が高いため、エアコンの効きがいい→省エネ
・隙間が少ない家は換気の効率が良いので、部屋の隅々まできれいな空気
・急激な温度差による体へのダメージや内部結露による健康被害がない
・隙間が少ないため、遮音性が高い
③【高気密高断熱住宅のデメリット】
・性能が高い建材を使うため、建築費用が高くなりがち
・二酸化炭素濃度が上がるので、石油ストーブが使えない
・湿気も排気口から排出→冬場は特に乾燥しやすい
④【高気密高断熱住宅を建てるメーカーを選ぶポイント】
・断熱のレベル(断熱材の厚みや種類・UA値)を確認
・全棟気密測定をしているか、オーナー住宅の平均C値を確認
・体感見学会に参加し、実際の建物のレベルを確認
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